<< 原発と欧州最後の独裁者 | main | 「安兵衛小路」今夜閉鎖 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク * - * * - * -

大林宣彦監督、尾道と絶縁宣言

 映画『転校生』や『さびしんぼう』など、尾道(おのみち)を舞台にした名作を発表してきた大林宣彦監督が、広島県尾道市と絶縁宣言した。期間限定ではあるけれど。本気の抗議に僕も黙っていられなくなった。

 尾道で生まれ育った監督は、ここにしかない尾道のよさを映画のフィルムに焼き付けて、故郷尾道、そして映画への愛をしたためた。景気がよくなかった尾道に若者らが訪れるようになったのは、大林氏の影響に他ならないだろう。ただ大林氏は人寄せのための、単なる観光映画を作ったわけではなかった。そのため、もっと観光客を呼び込もうとがんばる地元との間に軋轢が生じることになる。皮肉にも観光客がこぞって押しかけることになり、消費者本位の町が形成されるようになった。地元住民にとってみれば生活が便利になり、景気がよくなることは喜ばしいことである。しかしその先には何があるというのだろう? よくある東京の真似事でしかない、どこにでもある風景の町へ突き進むだけなのに。何もない町ならそれもいいだろう。しかしこの尾道は、他の地域がうらやむほどの「地域遺産」ともいうべき、おカネに変えられない財産をたくさん持った町だ。尾道は昔から多くの文人や芸術家に愛されてきた。大林氏が尾道作品に込めたのはそういうことであって、その精神性を置き去りにして、経済活動だけに奔走するのはいかがなものだろう。地元住民は尾道にもっと誇りをもってほしいと思う。

 今回のロケセットの展示は尾道には似合わない。それでも人はかなり集まったゼ、というかもしれない。それがどうしたというのだ。主催者にカネがたんまり入ることの意味がよくわかっていないのだろう。地元だって潤うだろうって? 一瞬ね。何かを少しずつ失っていることに気づかないのだろうか? 戦艦大和が建造された呉で展示されるならまだしも、近いしたまたま空いていたから尾道、というのも安直だ。なにも尾道が戦争の兵器を進んで展示することはないと思うのだ。

 大林氏は尾道に恩返しをすると同時に、映画への愛を唱える人だ。映画というのは映画の中でのみ完成されるものだ。現実の中で復活させるのはナンセンス。現実の中でそれが再現されるというのは、その場所にいきなりペンキを塗りたくるようなもの。それはその場所が映画に利用されるというより、侵食されることを意味する。それは映画という愛なのか? おそらく違うだろう。映画は映画の中でのみ自由で、それを再上映する人々の心の中だけに愛は宿るものだろう。ロケ地がテーマパークになったら、もはやそこには映画など存在しないのだ。ロケ地めぐりは素のままのその土地を、それぞれが映画のシーンを思い浮かべながら歩けるからこそ、また新たな感動があるというものなのだ。その映画がまた好きになり、その風土を愛したいと心から思えるのだ。想像力が心を豊かにし、想像力の欠如が虚しさを蔓延させていることにいいかげん気づきたいものだ。  

 今回の件は商売人と芸術家の見解の違い、という見方もできるだろう。だけどこの地を商売人に託すのと、芸術家の精神を残すのと、どちらがふさわしいだろう? 両立ができるといいけれど、地元の対応を見ていると尾道の将来は危うい。先人が培ったこの風土を、決して風化させることのないように願うばかりだ。商売人に安売りしてまた元の木阿弥に戻るよりも、文学と芸術の町として未来永劫人々に愛される尾道として豊かさを堅持すべきだ。
大林監督、故郷・尾道市に異論 戦艦大和セット公開巡り

【 asahi.com 2006年04月24 18時36分 】

 広島県尾道市で一般公開中の戦艦大和の原寸大ロケセットについて、出身地の尾道で数多くの映画を撮影している大林宣彦監督(68)が「ロケセットは映画の中で初めて意味を持つ。人寄せのための公開は、戦争やふるさとを商売にしているようで恐ろしい」と、市の観光行政を批判している。セットには予想を超える人が集まり盛況だが、大林監督は「公開中は故郷に帰らない」と宣言した。

 ロケセットは、昨年12月から公開された映画「男たちの大和/YAMATO」(佐藤純弥監督)の撮影のため、約6億円をかけ制作された。本物の大和は広島県呉市で建造されたが、今回は数カ所あった候補地から、空いている造船所があるなどの条件を満たした尾道市に造った。

 昨年7月から市や観光協会でつくる公開推進委員会が大人500円、小学生300円で公開を始めた。3月末現在で当初予想の3倍以上の78万人が訪れている。3月末までの公開予定だったが、大型連休期間の5月7日まで延長された。

 この映画は東映、朝日新聞社、テレビ朝日などが出資。最終的には興行収入約50億円、400万人以上の動員が見込まれている。制作した角川春樹氏(64)と尾道市との協議がきっかけで公開が決まったという。角川氏は「壊すだけで2000万〜3000万円はかかる。だったら地元に恩返ししようと公開に同意した。プロモーションとしても成功だった」と話す。

 大林監督は、映画自体は評価しているが、その後のセット公開を支援する観光行政のあり方について、講演会などの場で繰り返し批判している。これに対し、尾道市観光文化課は「古いものを大切にする精神は監督と共有しているはず。公開は一時的なものに過ぎず、町の風情を壊すことにはならない」と反論する。

     ◇

 大林監督は次のように語っている。

 僕の自慢は、尾道に映画の記念碑やセットを残していないことだ。映画を見た人の心に残ったものが記念碑。セットを残そうなどという提案はすべて断ってきた。尾道市にとってはそれが不満だったのだろう。

 「男たちの大和」という映画がふるさとで撮影されたことは、誇らしく思う。僕の尾道での撮影スタッフも協力した。でもセットは残すためのものじゃない。スクリーンに映し出されて初めてリアリティーを持つ。単なる張りぼては、夢を壊すだけではないか。

 恒久的に残すものとして、戦艦大和の歴史がある呉市につくられたのなら賛成するが、いかにセットを残すかばかりに気を取られた尾道市につくられたことは、大和にとっても不幸だ。

 小学生からも金をとって、ふるさとや戦争を商売にしている。セットが公開されているうちは尾道とは絶縁だ。これは、大林映画30年の理想に対する否定であって、怒らないわけにはいかない。

 僕の願いは、ふるさとがあるがままに残って欲しいということだ。高度成長期、尾道でも古いものが壊されたが、これからは古いものを残すことが資源になる。「そこにしかない暮らし」を求めて旅人は来るのだから。

     ◇

〈尾道を舞台にした大林監督の主な作品〉

・転校生(82年)

・時をかける少女(83年)

・さびしんぼう(85年)

・ふたり(91年)

・あした(95年)

・あの、夏の日―とんでろ じいちゃん(99年)

※カッコ内は公開年

(下記ソースより引用)
http://www.asahi.com/culture/update/0424/022.html 
あらいさとる * 映画 * 23:36 * comments(5) * trackbacks(0)

スポンサーサイト

スポンサードリンク * - * 23:36 * - * -

コメント

はじめまして。尾道在住24年の者です。
尾道に一週間滞在してみてください。
尾道の現実が見えてきますよ。
Comment by 尾道の民 @ 2006/04/28 1:02 PM
「ふるさと」には、いつまでも昔のままであってほしい・・・
地方出身で上京して成功した有名人が、何かのインタビューで
お決まりのごとく繰り返すフレーズですが、はっきりいって
いま現在その町に暮らし続けている人がいうならともかく
普段は東京に住んでるような連中が言うのは、身勝手です。

自分達は都会で活気のある街での暮らしを謳歌しつつ、たまに
ふるさとに帰ってきて、ちょっと街が昔より発展したり
近代化したりしていると「古里が変わってしまった」だの
「昔ながらの良さが無くなってしまった」「けしからん」だの。

地元で暮らす人に、いつまでも30年前・40年前と同じ生活を
していろっていうのかね? 都会に出て行った連中の
ノスタルジーを守るために? 冗談じゃないですよ。
Comment by @ 2006/05/03 11:00 PM
 尾道を旅していて商店街をみると
 すごく寂れているのに気付きます。
 祭りもすごく活気がなかったです。

 戦争兵器を意味のないところで展示すると
 いうのはどうかと思いますが、
 もっと穏やかに見守ってもいいと思います。

 市は必死に生きようとしています。
 町を経営破綻で潰したくないんです。きっと。

 絶 縁 宣 言。

 悲しいです。
 結局故郷に恩返しをするどころか故郷を潰してます。
 尾道を永遠に封印したいんでしょうかね。

 いろんな意見はあると思いますが
 故郷に絶縁だなんて映画じみた発言せずに
 仲直りして欲しいな…と
 一旅人は思いました。

-----
 ふっと引用が多い文章でヒットしたので
 発言させて頂きました。
 全文引用はリンクつけていても法にふれますよ。
Comment by 尾道旅人 @ 2006/05/06 1:13 PM
住民が戦艦大和の展示を切に願うのであれば、それでいいのでは。
尾道の住人が間接的であっても自ら選択したことなのだから。
いろいろな考えがあるけれど、
市の観光行政の判断がどうかは歴史が検証するはずです。

批判をする人たちは、
自らの信念と尾道への思いから発言していると思われます。
戦艦大和の展示を片付けることはまず不可能だし、
これを推進した人にとっては狙いどおりで、
いろんなことが達成できているはずです。
批判をする側ははるかに無力です。
だから批判ぐらいはさせたほうがいい。

尾道の産業の一つが観光であるならば、
何をもってして旅人は尾道に惹かれるのか、ということですね。
Comment by @ 2006/05/06 7:43 PM
この記事に感銘を受けました。この記事を他人にも見せたいので、転載してもよろしいでしょうか?
Comment by 尾道B @ 2017/04/17 1:56 AM
コメントする









トラックバック

このページの先頭へ